芸術に傾倒する人

多重人格、つまり解離性同一障害は、アメリカ精神医学会の診断基準によれば人格障害の一種とされています。
人格障害とは、精神障害の症状とその経過とは異なり、明確な始まりや終わりがありません。
つまり、行動や内的状態の偏りのことを指しています。
精神的な病のように、はっきりとした症状が、ある期間に現れるのではなく、ある程度持続的に偏った行動や気分が現れるのが人格障害というわけです。
 一般に境界例とかボーダーラインと言われているのは、境界性人格障害です。
境界という言葉から、病気と健康のボーダーラインという印象を受けますが、厳密な定義は、神経症と精神疾患との中間という意味になります。
 私たちは普段、現実を適切に検討するという意味では性格のメカニズムが保たれています。
不安や抑うつ、罪悪感や恥などのような不快な感情体験を弱めたり、避けたりすることによって心理的な安全を保とうとするのです。
 しかしながら、芸術に傾倒する人たちは、常に自己の感情体験を強めたり、接近することによって自らの感性を表現しようとします。
 対人関係の不安定さ、気分変動の激しさ、衝動性の高さ、自己同一性の障害、虚無感、自殺企図・自殺念慮、見捨てられ感、制御できない強い怒り、一過性の妄想は、まさに境界性人格障害の特徴ですが、有名な芸術家の人生を辿ると同様の事象を垣間見ることが可能です。
 わたしたちは普段の生活の中で創造性ということを他の思考態度と比べて金科玉条のごとく優越して考えています。
とはいえ、心の健康を考える時、それは薄氷を踏むように、危険と隣り合わせであることを自覚しなければならないでしょう。
それは、芸術に携わる人だけでなく、一般の仕事で創造性を生かそうと働いている職業人にも向けられています。
 持続的に孤独感に苛まれていく経過をゆっくりとしかも確実に進行していく生活は、誰にでも境界性人格障害を体内化することにつながります。
今、芸術に傾倒する人やそれを支える人たちはこの点を留意しておくべきでしょう。